E型

最終更新: 2004-10-31 作成: 2004-7-6

E型(150型)

経緯

乗客の増加に対応して大正14年4月1日認可を受け，10両(151〜160号)の半鋼製4輪車が大正14年4月4日に竣工しました。初の鋼製車体の車両です。我が国初の鋼製4輪車は大正11年認可の神戸市G車でした。G車の次に大正13年認可で登場したH車は，E型と同じ梅鉢製で，窓や扉がやや長いほかはE型と同一形態でした。神戸H車と同型は他に新阪堺と朝熊登山鉄道に存在しますが，当時は鋼製車体の車両そのものが少なく，その先進性がうかがえます。

車体関係

外観：正面は3枚窓で腰板中央に前照灯を設置。正面のRは深くなく，車端の絞りが無いので，真上から見ると四角い車両です。側面の扉と窓配置は1D8D1となっています。ドア間の8枚の窓のうち，端の2枚は幅が他の6枚よりやや広いようです。屋根はシングルルーフでアーチが深く，中央におわん形のベンチレータを6個設けています。全長9068mm車体幅2438mm自重9.5tでした。

一般：台枠，骨組，外板に鋼材を用い，外板の鋼板は鋲で留められています。台枠がフラットな構造で，床面高さは727mmと最近まで製作されてきたボギー車よりも低い低床車両でした。製造は堺の梅鉢鉄工所(→帝車→東急)が担当しています。

窓・戸：正面窓，側面窓とも下降窓で，窓枠は木製，隅にRはありません。扉も木製で，運転台横の小窓を戸袋とした2枚引戸となっています。

車内設備：座席は扉間いっぱいに延びていて，座席定員は26名。定員は58名です。室内灯は3箇所。

機器関係

主電動機・駆動装置：三菱電機製MB-82-Lで26kW×2台。駆動装置は釣掛式で歯車比は69:14となっています。

制御装置：三菱電機製KR-8。直接式で電気制動付き。

ブレーキ装置：手用(ハンドブレーキ)と電気の2種類です。

集電装置：トロリーポール式で，架線が複線架空線式のためダブルポールとなっていました。

台車：日本車両製のS型台車で輪距はA型と同じ7ft6inch。車輪径は673mm

変更点

昭和5年6月5日認可で，動揺が多く脱線しやすいので固定輪距を8ft6inchに延長改造し，6月18日に竣工しています。G型の竣工と同時で，G型の台車も7ft6inchの日車S型であることを考えると，E型の台車を延長改造したとは考えにくく，振り替えたものと思われます。なお神戸などの同型車は8ftのブリル79E低床台車をはいていました。また台車改造により自重が9.78tに増加しています。

脱線が多いという点では，昭和3年4月から，広島駅−紙屋町間に敷設していた73ポンドのステップレールを，摩耗が進んだという理由で80ポンドのハイTレールに改良しています。広島の併用軌道では，他の交通への影響を配慮して，曲線部を除き溝付きレールではなく，ステップレールを用いていました。撤去したステップレールは宇品線や宮島線の架線柱に転用しています。

昭和9年10月13日には架線が単線架空線式となり，シングルポール改造が竣工しました。

昭和13年11月11日の千田車庫火災で160号が全焼しました。復旧の際，扉を引戸から折畳式に，鎧戸はカーテンに，木製屋根は鋼製屋根に，椀型ベンチレータは回転型ベンチレータに変更し，昭和15年1月19日に変更認可，1月25日に竣工しています。

昭和16年12月17日認可で，救助器をパーメンタフェンダーからロックフェンダーに変更しました。

昭和18年10月26日認可で破損防止のため前照灯を屋根に上げる改造実施。

ここで，同型車の動向を見てみましょう。神戸H車は，昭和9年に下降窓を2段の下部上昇式に改造し窓の大きな軽快な形態となりました。戦災で半数の10両が失われ残りは昭和31年〜33年に廃車となっています。朝熊は神都交通と合併直前に休止となり，昭和19年1月に鉄軌道統制会の斡旋で名古屋市電気局が資材を引き取っています。昭和22年3月に北陸鉄道松金線へ譲渡し昭和25年廃車。新阪堺は昭和19年4月に大阪市三宝線となり731型となりました。戦災で2両がやられ残りは昭和30年1月まで働きました。

さて，広島では，戦後の昭和27年10月2日認可で，老朽化した車体の更新を行うことになりました。正面は3枚窓のまま，前照灯は屋根上埋め込み。正面のRは深く，車端の絞りは無い。側面の扉と窓配置はD6Dで2段窓，ウィンドシル，ヘッダはあるが張り上げ屋根となった。と書くより当時の最新型である800型のショーティ版と言ったほうがわかりやすいでしょう。全長9069.6mm，全幅2400mm，全高3395mm，定員58名座席20名となりました。 154,155,156,158,151,159,157の順に7両が昭和27年10月から昭和28年4月にかけて竣工しています。

昭和29年10月30日認可でエアブレーキ化を行い手用は省略することになりました。

江波車庫をベースに活躍しましたが，昭和40年に未更新車が廃車，更新車も昭和44年に廃車が始まりました。昭和46年5月6日に7号線廃止により余剰となり最後に残った156,157号が5月20日に廃車となります。

157号は6月1日に大芝の県立交通公園に引き取られ，「なかよし号」としてクリーム色をベースにカラフルな色彩で保存されました。一方の156号は江波車庫に保管され，65周年記念行事に姿を見せたほか，昭和57年8月26日には，TV番組「ザベストテン」で「シブがき隊」の生中継の舞台となったこともありました。

復元車(100型)経緯

広島県大型観光キャンペーン「SunSunひろしま」に協力するため，創業当時の車両を復元することになり，昭和59年4月5日認可で157号を引き取り101号に改造しました。

車体:台枠を改造し，鋼体部は新製しました。車側扉は廃止してチェーンを設け，客室とはエア式の仕切り扉を設けることで，乗客の転落防止を図っています。また床段差の安全確保のため，ライトの点滅で乗客に注意を促すようにしています。屋根は二重構造とし欄間窓を設けています。

台車:タイヤ形状変更を現状に合わせたほかは150型のままであるためA型とは異なり低床車となりました。

制動:保安ブレーキを追加しています。またコンプレッサをDH-10からDH-16に変更しました。戸閉器は750型の中古品と思われます。

集電:ビューゲルをZパンタに変更しました。

補助回路:チョッパ充電器を設置しました。尾灯は603号から転用と思います。

そのほか，フェンダー，合図器(フットゴングは京都?車内ベルは501〜2003までの冷房化時に外したものでは？)，装飾用ハンドブレーキ(1090からの転用)，トロリーポール(京福より)などを設置し雰囲気を盛り上げています。

156号復活経緯

電車内被爆者のつどいにおいて，被爆当時は流線型の四輪車が主力であったことが話題となり，機運が高まったので，昭和62年5月13日認可で復活することになりました。

車体:戸閉装置，戸閉インタロック，チョッパ充電器を追加しています。立席部の戸閉器のカバーは1030型を思い出させるものとなりました。床面積や座席寸法に変わりは無いが，定員算出基準の変更により，定員42名座席18名となりました。

台車は車輪径を660mmにし，現状の踏面形状に変更しています。

制動:保安ブレーキ，保安ダメを追加。コンプレッサもDH-10からDH-16に変更しました。

集電:ビューゲルをZパンタに変更しました。

復活の際，半鋼製車のため不燃化構造がB基準となり，監督官庁の許しが出ず，運行区間，期間，取扱いを限定し，慰霊目的でようやく認可が得られました。このため，復活後も活躍の機会が少ないのは大変残念です。7号線復活時には先頭をきって走って欲しかった思うのは，筆者だけでしょうか。

車歴表