C型，D型，1040型

Last-Modified: 2005-1-31 Since: 2004-6-30

C型(1000型)

経緯

大正8年に開業前の広島軽便鉄道の己斐〜草津間の蒸気鉄道の免許を譲り受け，電化開業のために10両購入した木造ボギー車のうちの2両です。当初計画していた台車や電気品が，第一次世界大戦後の反動恐慌により調達困難となったため，2両(モハ1,2号)については調達可能な機器に変更して竣工しました。設計認可は大正11年4月18日，竣工は7月23日，宮島線己斐町−草津町間開業8月22日でした。

車体関係

外観：正面は3枚窓で運転台は中央にあり，前照灯も腰板中央に設置。幕板部に方向幕があります。側面の扉と窓の配置はD343Dとなっています。屋根はシングルルーフです。連結器，救助器は設けられていません。全長35ft(10668mm)車体幅8ft5inch(2565mm)となっています。高さと自重は，台車の違いによりC型とD型で異なります。

一般：木造で製造は堺の梅鉢鉄工所(→帝車→東急)が担当しました。

窓・戸：扉は片側2枚で両端にあります。停留所が低いため，サイドステップが設けられています。側窓は片側10枚，正面は3枚で窓枠内側上部にRがつき下降窓となっています。窓の保護棒は3本です。

車内設備：座席は客室長手方向いっぱいに延びて，座席定員は36名，定員60名。天井には運転台と客室を仕切る櫛桁があり，車内の運転台と客室を仕切るのがH型のポールである点は，現在の車両の構造と同じです。鉄道線車両らしく網棚も設置しています。

機器関係

主電動機・駆動装置：東洋電機製造製の9Aで37.3kw×2台。駆動装置は釣掛式で歯車比は64:15となっています。

制御装置：直接式で電気制動付きの東洋電機製造製のDB 1型K-13式

ブレーキ装置：手用，電気のほか，当初から空気ブレーキがありました。米国アリスチャアーマー会社から購入したもので，クノールのブレーキだったようです。クノールのブレーキ機器は，最近ではJRの通勤電車で採用したスクリュー式コンプレッサが有名ですが，当時は上信や叡電デナ1と琴電300号ぐらいしかなく，珍しいものでした。

集電装置：トロリーポール式で，シングルポールを前後の台車上に1台ずつ設置していました。

台車：日本車両のA型台車で，ホイールベースは4ftと短いのが特徴。車輪径は33inch。

変更点

大正13年8月7日認可で，連結運転のため，連環連結器並びに螺旋連結器の二種を装備しましたが，H型登場により不要となり昭和11年4月21日認可で取り外しました。

昭和10年11月18日認可で暖房装置を新設しました。

昭和13年11月11日の千田車庫火災でモハ2号が全焼し，1040号として復旧しました。残ったモハ1号は昭和14月8月18日にモハ1000号に改番しました。

また，千田車庫へ回送のため昭和14年10月25日に己斐−千田町間の直通認可をとりました。終電後にサイドステップを撤去して回送するもので，救助器は省略する特認をとっています。鉄道線車両を工場入場のため軌道線に乗り入れることは，名鉄揖斐谷汲線でも実施していたが，こちらは救助器省略の特認は取っておらず，モ750型廃車まで救助器をつけて回送する姿を見ることができました。

昭和16年8月13日認可でトロリーポールをパンダグラフに変更。東洋電機製造製のスプリング上昇式のB型を装備しました。取り付け位置は西広島側の台車上です。また最大高さが全車種4410mmとなるよう，パンタグラフの下にやぐらを組んで調整しました。竣工は昭和18年2月のようです。

昭和23〜24年に車体更新修繕を行ったようですが詳細は不明です。

昭和26年4月に宮島線についても車号を0からではなく1から始めることになり1001号に改番しています。

昭和32年4月に1040型の連接化工事の際に機器統一のため，1041号と1001号が機器の交換を行い，1010型に編入され1018号となり形式消滅しました。

D型(1010型)

経緯

前記の宮島線開業用に準備した10両のうち8両(モハ3〜8号)は本来の機器を装備して，大正13年2月25日に竣工し，4月6日の草津町−廿日市町開業に間に合いました。なお設計認可はC型と同時です。

車体関係

車体はC型と同一です。

機器関係

主電動機・駆動装置：ウェスチングハウス製のNo.532Bで37.3kw×2台。駆動装置は釣掛式で歯車比は67:17となっています。

制御装置：直接式でウェスチングハウス製のB-18-L。

ブレーキ装置：空気ブレーキはウェスチングハウス製のSM-3です。

集電装置：C型と同一です。

台車：J.G.ブリル製76Eで，ホイールベースは4ft，車輪径は33inch。

変更点

竣工後はC型と同じ経緯をたどり，暖房装置，直通認可，パンタグラフ化，車体更新修繕を行いました。

昭和13年11月11日の千田車庫火災ではモハ8号が全焼し，1041号として復旧しました。残った車両は昭和14月8月18日にモハ1010〜1016号と間を詰めて改番しました。

車体更新修理のころ制御器を泰平B-29に変更したようです。

昭和26年4月の改番では1010号を1017号に変更しています。

昭和32年3月に1011〜1014号の車体を前中扉方式(D6D4)に，制御装置を間接化(NC-206)，制動装置を非常弁つきのSMEに変更しました。

昭和32年4月に1001号が機器変更により1018号となり編入されています。

昭和41〜42年に全車廃車になっています。

1040型

経緯

昭和13年11月11日の千田車庫火災にて焼失したモハ2,8を昭和15年4月16日認可で半鋼製車体に変更し，昭和16年1月25日に復旧(1040,1041号)竣工しました。

車体関係

外観：正面3枚窓で側面から見ると斜めに傾斜している流線型スタイルです。正面幕板に方向幕はなく，代わりに左右に通風孔があります。側面窓配置はD4D3の前中扉方式で中央扉が非常に広いものです。これは初めて前中扉方式を採用した大阪市801型に範をとったようです。当時，路面電車でも前中扉方式は珍しく，鉄道線となると皆無ではないかと思います。そのほかの車体の特徴としてウンドシルやヘッダはあるが張り上げ屋根となっていました。全長10,918mm全幅2,640mm自重16.9t全高は1040号が3640mm,1041号が3717mm

一般：半鋼製で自社工場にて製作しています。

窓・戸：正面は下降窓，側面は2段窓。ロールカーテンを装備していたようです。扉は引戸。扉間の4枚の窓のうち3枚が戸袋窓でした。広い中央扉の真ん中にはポールがあり，前部側を出口，後部側を入口としていたようです。

車内設備：車内灯は40w×14，座席定員34名，定員60名です。

変更点

昭和16年8月13日認可でパンタグラフ化。

昭和26年4月の改番では1040号を1042号に変更しました。

昭和27年に中扉を小型化し窓配置がD4D3からD4D4となりました。

昭和32年10月18日に連接車に改造。西広島側が1041号，宮島側が1042号で個別の番号を持っています。正面はそのまま，側面の窓配置はD7D1+5D4としています。車掌窓は引き違いです。連接面にも窓があり，全断面ホロではありませんでした。全長21.532mm，自重31t。座席定員は編成で66名，定員140名。機器は1041号と1001号で交換し，台車(NSK 56-48A2)と主電動機(TDK 9A)を統一しています。主電動機は前後の台車のみで計4台とし歯車比は59:20に変更しました。制御器は間接式のNC-209，制動装置は非常弁つきのSMEに変更しました。パンタグラフは西広島側に1台設置，電流容量からか，シューを2本に改造しています。

昭和54年12月31日に廃車となりました。

車歴表