800型

最終更新: 2005-9-30 作成: 2005-2-26

800型

経緯

戦後初めての完全な新造車です。昭和26年3月8日認可で801〜803号，昭和26年7月10日で804〜807号，昭和27年2月12日認可で808〜810号を製作しました。竣工図によると808〜810号は昭和26年10月には竣工していたようです。

車体関係

外観：正面3枚窓，側面窓配置D9Dの前後扉の配置です。張り上げ屋根に埋め込み形の前照灯など450型に近い面もありますが，側窓の高さが低く屋根が厚いので，ドッシリとした印象を持たせる車両です。正面窓直上には水切りがついています。ベンチレータはなく，正面窓上部の左右に通風孔が設けてあります。方向幕は正面中央窓上部に，通風孔にはさまれ設置してます。窓の下には400型初期車以来のウィンドシルが復活しています。全長は11,950mm車体幅2,430mm自重15.3tです。製造は始めてナニワ工機(現在はアルナ車両)が担当しました。

ナニワ工機は昭和22年に設立した車両メーカで，阪急の資本が入り，阪急の車両製造や改造を担当していましたが，昭和26年に京都市電800型の製造を担当したのを機会に外販を積極的にすすめ，京都と同一設計の車両を広島電鉄と伊予鉄道から受注しました。このため車端面が垂直であることを除き京都市電800型とまったく同一の鋼体となっています。

京都市電800型は昭和25年から川崎車輌・近畿車輌・帝国車輌・汽車・ナニワ工機と複数社で製作しました。ナニワ工機は856〜860号を担当しました。800型の元となったのは，昭和12年に日本車両が担当した600型でした。車端面が傾斜した流線型に張り上げ屋根，埋め込み前照灯などのスマートな外観で軽量構造となっていました。新塗色のクリームとグリーンで登場したことから，地元の方は青電と呼んで親しんだ名車でした。特徴である正面窓上部の水切りと通風孔は，広電でも採用し550型まで引き継がれました。

一般：台枠は鋼製で床面高さは780mm，大阪市電のような波型ではなく，神戸市電のように平面となっていますが，出入り口付近のみスロープとなっています。

窓・戸：正面3枚で3枚ともほぼ同じ幅の下降窓です。側面は2段窓で戸袋部の2枚を除き上昇式となっています。保護棒は1本です。扉は木製の引戸で車体中央側へ引き込むようになっています。またドアエンジンはなく手動です。

車内設備：座席は扉間に19名分で2箇所となり座席定員38名。定員は80名でした。ステップは1段です。室内灯は京都と同じ管球(蛍光灯のような筒型の電球)です。

機器関係

主電動機・駆動装置：801〜807号はSS-50で38kW×2台。808〜810号はSE-133の38kW×2台。駆動装置は釣掛式で歯車比は59:14となっています。

制御装置：直接式で電気制動付き。泰平のB-29式KR-8だったと思います。

ブレーキ装置：空気，電気で，手用は製造時よりありませんでした。当時の軌道建設規程では手用を省略するためには，電気制動およびハンドスコッチで確実に停止できることの証明が必要で，車両完成後に制動試験の結果を提出する必要がありました。

集電装置：二宮式ビューゲルを製造時より装備してました。取り付け位置は車体中央ではなく，台車センタピン線上に設けていました。

台車：801〜807号までは，向洋の日本鋼管製のブリルタイプの台車で輪距は1,400mm。808〜810号は，京都と同じ住友製のKS-40Jでコロ軸受けを初めて採用しました。

変更点

昭和28年11月24日付で808〜810号の主電動機をSS-50に変更し，形式内で機器統一を行っています。余剰となった主電動機は650型の低床改造に使い，650型の高床用主電動機は600型へ回っています。

昭和31年12月22日認可でビューゲルの取り付け位置を台車直上から，車体中央へ移設しました。

昭和38年1月21日には，横川橋の運行制限解除となり全線での運行が認可されました。これは800型竣工当時に，横川橋が仮橋であったため認可が下りず，後日になって認可されたもののようです。この当時，801〜805号は江波，806〜810号は千田所属となっていました。

前後2扉で車両も小さくワンマン化に不適当とされていたため，昭和47年に神戸市電の転入により807〜810号が廃車となりました。807号の台車と機器は551号の直接制御器化改造に使用されました。808〜810号の台車は都電の機器と組み合わされ，570型に台車を譲った750型の新たな台車となり，いまも貨50型で見ることができます。

残った車両も昭和51年に801,802,804〜806号が廃車となり，台車や機器は他車へ流用されました。

801号ワンマン車

経緯

昭和50年11月1日危険物の取扱い不注意により千田車庫が出火。3両焼失3両損傷となったため，補充のため休車だった803号を801号として復活させ，昭和51年7月26日認可でワンマン化改造を行った車両です。

車体関係

正面窓は中央のみ下降窓をHゴム固定の押し出し式に改造。向かって右側の通風孔をワンマンの表示幕に改造しました。

側面は前中扉とするため，前扉から数えて5枚目6枚目の窓をつぶして1000mm幅の中央扉を設け，中央扉と7枚目の窓の間に下降式の車掌窓を設けています。後部扉は埋められ，Hゴム固定の一枚窓でしたが保護棒が設けられていました。この結果窓配置はD4D1-3-1となりました。

扉はプレスドアとなりドアエンジンを新設しています。そのほかワンマン関係の機器を設置しましたが，引き紐式合図ベルは運転台天井に取り残されたままでした。

機器関係

主電動機はMB-245-Lで38kW×2台。歯車比は58:14。

台車はブリル77Eに変更しています。

集電装置はZパンタに取替え改造しています。

これから機器は焼失した902号の機器のようです。

変更点

電車開業65周年のときに広電バスの緑と白の縞模様となりました。標準色に復帰後，700型導入により廃車となり，昭和57年10月から広島ナタリー遊園地での「ちんちん電車展」に展示されました。展示終了後は荒手車庫で倉庫として使われましたが，2004年についに解体されました。

車歴表