500型

Last-Modified: 2005-7-10 Since: 2005-5-22

500型

経緯

軌道線用として初めて前中扉配置と自動扉を採用した車両です。昭和28年12月16日設計認可で昭和29年1月25日竣工ですが，社史などでは昭和28年9月22日購入となっています。

車体関係

外観：正面3枚窓，側面窓配置D5D4の中出式の配置です。

正面は方向幕の寸法が160×450mmから200×600mmに拡大し，トロリーレトリバーを付けたこと以外は800型と同一です。

側面は扉配置と窓構造の変更により全長が50mm長くなりました。雨どいの位置が265mm高くなりなったので，屋根が薄く見えます。窓構造は変わりましたがウィンドシルは残っています。車体裾の台車部の切欠きは，800型が上のRが250mmで下のRが100mmで斜めの直線で結んでいたのに対し，500型では上のRは250mmで下のRが150mmで垂直の直線で結んでおり，伊予鉄と同じ寸法です。

ちなみに伊予鉄車両も昭和29年製の56〜58号でビューゲル化により前中扉配置となりましたが，500型とは，通風器が尾灯と続行灯のため屋根上に移り，室内灯具と一体化しているので管球は採用せず，オーバーハングが50mm短いという違いがあります。

一般：800型と同じ半鋼製ボギー車でナニワ工機が製作を担当しました。

窓・戸：側面の客室窓は上部固定，下部上昇式のいわゆるバス窓です。上部の固定窓は1050型と同じ金属支持です。伊予鉄車両はHゴムでした。戸袋窓の下部も固定ですが他の窓と同じ木枠で，保護棒までついていました。扉は木製の引戸で，窓の上部にRがあり，ガラスには「自動扉」の文字が入っていました。

車内設備：座席定員は34名で800型から2名減っています。定員80名とステップ1段は800型と同じです。室内灯も800型と同じく管球が12本でした。

機器関係

主電動機・駆動装置：SS-50で38kW×2台，釣掛式で歯車比は59:14は800型と同じです。

制御装置：直接式で電気制動付き。泰平のB-29式KR-8です。

ブレーキ装置：空気，電気で，手用は製造時よりありませんでした。

集電装置：二宮式ビューゲルを台車センタピン線上に設けていました。

台車：汽車製のKS-7で輪距が1600mmと，800型のKS-40Jから200mm延び，主電動機を外掛けから内掛けにしています。ばねは全てコイルばねとなっています。台車枠の主体は形鋼を用い，できるだけ小さい部材をさけ，自動溶接や簡単な溶接で組み立てができるよう構造を工夫しています。

変更点

昭和31年12月22日認可でビューゲルの取り付け位置を台車直上から，車体中央へ移設しました。

昭和45年3月13日認可でビューゲルを泰平電機製のZパンタグラフに変更しました。Zパンタグラフは中古品でした。またトロリーレトリバーは新製後の早い時期に取り外しています

昭和48年12月15日認可でワンマン化を行いました。外観では正面右上の通風器がワンマン表示幕になり，車体中央に車外スピーカがついています。車内は放送装置，停車押しスイッチ，扉光電管設置とそれらの電源機器の追加改造を行いました。

昭和53年の暖房装置取り付け，昭和56年の方向幕の大型電動化は各車共通です。500型の電動式の大型方向幕は，初期型の角にRがないタイプでした。またワンマン幕に干渉しないよう，方向幕の中心がやや左に寄っていました。

昭和59年2月7日付で冷房改造が認可されました。三菱MDA方式で，空調制御箱とユニットクーラを屋根上に設置しました。低圧電源をSIV(30kVA,AC220V,DC24V)からとるので，MG(1.7kVA,AC100V)は撤去し，室内灯も蛍光灯に変更しました。また車内に残っていた車掌用の引き紐式の合図ベルも，このとき撤去(紐はワンマン化時に撤去)しています。

昭和61年4月に保安ブレーキを取り付けました。このころには車内更新が行われ，ニス塗りの木目が美しく整備されましたが，新しい木材は南洋材だったようで気孔から排ガス粉塵を含んだ水分を吸い取り，数年で黒く変色してしまいました。平成6年にはブレーキ灯がついています。

昭和50年代終わりからは多くが広告電車となり，501号は交通安全や電車開業75周年の記念塗装を行うなど，両数の割に目立った活躍をしていましたが，市内線への連接車投入で急に廃車が進行し現在は1両も残っていないのは信じられません。

車歴表