300型

最終更新: 2004-9-5 作成: 2004-7-31

300型

経緯

昭和13年4月11日認可，8月23日竣工で大阪市電気局から購入した501型5両の木造ボギー車。市内線用としては，初のボギー車でかつ初のエアブレーキ付き車両でした。B型の鋼体化改造中は車両が不足するため購入した車両です。

大阪市電気局501型経緯

明治43年6月21日に90両，大正元年9月12日に10両認可で製作した車両です。大阪でも初のボギー車でかつ初のエアブレーキ付き車両でした。製造は天野と梅鉢が担当しました。大正4年12月28日認可で，ブレーキの改造。大正8年4月23日認可で車内改造，大正13年12月2日認可でブレーキストロークの変更を行いました。輸送力の大きい花形車両として活躍しましたが，昭和6年には廃車が始まり，昭和12年6月10日付で広島に5両売却した後は，半数以下の40両となっていました。残った車両は昭和13〜15年に側板の構造と乗降口を改造しました。戦災で8両を失い，昭和23年7月と昭和26年3月に全車廃車となりましたが，528号は保存され昭和43年に大阪車両工業で竣工当時の姿に復元しました。復元車は市電保存館に現在もあり，大阪市文化財に指定されています。

車体関係

外観：明治期の車両ですが，正面にガラス窓があるいわゆるベスチビュール付きです。側板は腰細横長手2段で，馬車を思わせる古いデザインでした。屋根は二重となっています。全長10,640mm車体幅2300mmで，自重は12.5tと大阪時代より0.2t軽くなっています。

窓・戸：側窓は片側12枚，正面は3枚で窓枠内側上部にRがつき下降窓となっています。乗降口のデッキと客室の間の仕切り扉は両開きとなっています。定員は大阪時代と同一です。

機器関係

主電動機・駆動装置：35psが2個で，型名はGE-67-A8。駆動装置は釣掛式で歯車比は69:15となっています。

制御装置：直接式で電気制動付きのGE製K-9

ブレーキ装置：空気ブレーキはSM-3で，操作弁はGE製SF4，コンプレッサのCP-27は阪堺デト11や長崎168号と同型，手用はアクレーの丸型でした。

集電装置：トロリーポール式で，大阪時代はUS-6型を前後に計4本つけていましたが，広島では架線が単線架空線式なので，前後1本づつの2本となりました。

台車：ブリル22Eで，この時代の東京市電や，京津1型，イギリスなどでも多く用いられています。動軸と従軸があり，従軸より動軸にかかる荷重が大きいマキシマムトラクション台車となっています。車輪径は動輪が31inch，従輪が21inchと動輪の方が大きくなっています。主電動機は内がけ(動軸に対し台車の中心側に設置)です。車輪は移籍時にB型と同様バックゲージを短くする改造を行っています。

また，この台車にはボルスター(心皿)がなく，側受けのガイドに沿ってボギー(回転)するようになっています。なぜこのような構造なのか考えてみました。車両が大型化すると単台車では輪距が長くなり，曲線で曲がりにくくなります。神戸市電では台車枠と軸受部を固定せず自由度を設けたラジアル台車という単台車を採用していました。これに従輪をつけて曲線に合わせ回転するようにしたのが，この台車の発想ではと思います。引張力を高めるため荷重を動軸に近い位置にかけようとすると，心皿の位置は，主電動機に支障しないようにより高い位置となり，床面が高くなってしまいます。床面を下げるため心皿を使わず，主電動機の外側にある側受けで全ての荷重を受ける構造にしたものと思います。その後の台車は，主電動機を外受けにしたり，小型で強力な主電動機が開発されて車輪径が小さくなったりして心皿を使う方法が普通になりました。ところが近年になって軽量化，構造簡略化のため心皿のない，いわゆるボルスタレス台車が増えてきました。最新の熊本，岡山，高岡の低床車もボルスタレス，しかも動軸で65%の荷重を受けるマキシマムトラクションです。また名鉄800形は低床化のため，従輪を動輪より小さくしました。一旦は廃れた構造が，低床化のため，再び復活してきたのは不思議な感じです。

300型変更点

昭和16年に車号を0からではなく1から始めることになり300→305と改番しました。

昭和16年12月17日認可で，救助器をパーメンタフェンダーからロックフェンダーに変更しました。

あまり活躍しなかったようで，昭和20年6月に丹那車庫線(現在の県病院前電停から県病院方向に360m敷設，桜土手引込線)ができると疎開，全車ここで被爆しました。戦後は宮島駅構内や西広島駅構内で倉庫代用になったりしましたが，昭和26年に全車廃車となりました。

車歴表