500型，700型

最終更新: 2005-1-31 作成: 2004-7-30

500型

経緯

昭和13年11月11日の千田車庫火災により車両が23両も焼失したため，昭和14年6月1日認可で京王電気軌道から木造ボギー車23型を10両購入しました。

京王電気軌道23型経緯

今は20m車両が10両編成で走っている京王線も，大正2年に笹塚〜調布間が開業したときは軌道法により甲州街道上を四輪単車が走る路面電車でした。府中まで開通した後の大正8年に製作した19号よりボギー車となり，大正9年4月30日認可の23号から定員が多い23型に発展し大正15年の66号まで製作されました。出入台に扉が付いた先細りの車体が特徴の全長11.7mの木製ボギー車で，大正期の京王電気軌道を代表する車両です。車体は洋紅色で屋根は灰色，床下は黒色でした。また同型車として玉電16型，武蔵水電21型がありました。

23型は大正10年8月認可の29号からエアブレーキが付き，23〜28号も大正11年6月認可で35号以降の増備とともにアクレーの手用を撤去しエアブレーキに改造しました。関東大震災では新宿付近の大火により24,29号を焼失しましたが，同一設計で復旧しました。扉は当初2枚引きでしたが55号から1枚扉となり，その後他の車両も1枚扉に改造しました。 大正14年に京王の関連会社の玉南電気鉄道が地方鉄道法により府中〜東八王子間を開通し，翌年京王電軌と合併しました。合併後は玉南の規格に合わせて線路中心間隔の拡幅，架線の単線化，ホームの打ち上げ，玉南の改軌が行われ昭和3年から直通運転を行いました。23型も施設の改良と直通運転に合わせ，昭和3年4月認可でステップを折畳み式とし，ダブルポール4本をパンタグラフに改造しました。37〜66号のパンタグラフは大型のWH S-514Aでしたが，昭和4年認可改造の23〜36号は小型のTDKのB型パンタグラフとなり，後に全車小型のパンタグラフに改造しました。

玉南タイプの郊外電車が増えると23型は余剰となり，広島のほか昭和8年に多摩湖鉄道(→西武鉄道多摩湖線と拝島線の一部)に3両，昭和13年に東京地下鉄道城東線(→東京都電)に5両，昭和16年に大日本電力(→函館市電)に6両のほか，大連や北京にも譲渡され昭和16年に京王線からは姿を消しました。

車体関係

外観：車体の先端が細く絞られており，車体幅2286mmに対し車端正面は1524mmしかありません。正面3枚窓の両側の窓の幅はわずか205mmでした。前照灯は移籍時に腰部から屋根に上げられました。新製時から出入り台に扉があり車端方向に開くようになっています。側面の配置は1D2222D1で，二重屋根の明かりとりの窓も客室の窓配置に合わせてあります。明かりとりの窓の間の柱が太い4箇所に円筒形のものが突き出していますが，これはベンチレータではないかと思います。二重屋根は車端まで延びており，車端では下方に向かって僅かに絞りが入っていたようです。出入り台上部の幕板は客室の幕板から緩やかな曲線を描いて正面の幕板につながっていますが，扉と戸袋窓は平面で内側に引っ込んでいます。扉の外側のステップの奥行きを取るため奥に下げているのだと思います。客室の長さは8382mmで，側板は垂直羽目板構造，裾の絞りはありませんでした。

一般：木造で製造は枝光鉄工所，日車東京，雨宮製作所，東京瓦斯電気工業が担当しました。広島への移籍車には日車製は含まれていません。近年，京王から移籍したバスが，東京瓦斯電気に関係がある日野製であったのも奇遇と思います。

窓・戸：側窓は片側8枚，正面は3枚で窓枠内側上部にRがつき下降窓となっています。日除けは鎧戸で下降式でした。正面幕板部には方向幕が設けられていました。扉は引戸で下端はステップにかからず，運転台床面高さまでしかありません。

車内設備：運転台の床面高さは749mm，客室の床面高さは990mmで大きな段差があり，床が高い車両でした。出入り台と運転台の床面高さは同じですが，Hパイプで仕切られていました。出入り台と客室の間は段差はありますが仕切り扉はありませんでした。座席は客室長手方向いっぱいに延びていました。

機器関係

主電動機・駆動装置：東洋電機製造の9Cで38kW×2。駆動装置は釣掛式で歯車比は64:15となっています。

制御装置：直接式のDB 1でB13,C13,K13といったものがあったようです。

ブレーキ装置：手用はなくエアブレーキを装備。コンプレッサはDH-16でした。

集電装置：京王時代はパンタに改造していましたが，再びトロリーポール式に戻っています。架線の単線が完了していたので，ポールは前後に1本ずつ設置。

台車：宮島線D型で実績のあるブリル76E-1で，ホイールベース1478mm，車輪径760mmで動輪と従輪の大きさは同じ，チルド車輪装備，主電動機は外掛けです。この時代では標準的な台車でした。移籍時に1372mmゲージから1435mmゲージ対応に改造しています。

変更点

昭和16年3月25日付で車号を0からではなく1から始めることになり500→510と改番しました。

昭和16年12月17日認可で，救助器をパーメンタフェンダーからロックフェンダーに変更しました。

昭和17年5月26日認可で，チルド車輪を鋼製タイヤ付き車輪に変更しています。チルド車輪については米国では使用していたようですが，日本での普及状況など詳しい事は存じておりません。東急世田谷線上町車庫の仮台車がチルド車輪でしたので，関東では一般的だったのかもしれません。

また，戦時中は座席半減やつり革増設を行い大活躍したようです。被爆時も宮島線などに疎開しており被害は軽微でした。

700型

経緯

木造で痛みが酷くなってきていたため，昭和18年3月17日認可で鋼体化を行うことになりましたが，戦時中は施工することができませんでした。申請資料によると11604mm×2360mm×3547mmでボギー中心間5332mm，定員70(座席24)の三扉車となっていますが，図面は見つかっていません。寸法的には600型，650型より小さく，呉の60号型に近いものになっています。戦後の昭和23年10月30日付けで改めて鋼体化の認可がおり昭和23年12月から昭和25年7月にかけて全車700型に改造竣工しました。

車体関係

外観：正面3枚窓，側面窓配置D5DD5Dで，いわゆる運輸省規格型と同じ配置ですが，車体長が1m以上短く，また高床車であるためずんぐりとした車両となってしまいました。ただ戦後の混乱期でありながらノーシルノーヘッダ，張り上げ屋根と広電らしさをなんとか保ったのは評価できるでしょう。外観はだいぶ異なりますが実は車体長，扉幅，扉間隔は650型とほぼ同一となっています。

一般：半鋼製で日立製作所笠戸工場で車体を製作しています。

窓・戸：正面は下降窓，側面は2段窓です。保護棒は1本。扉は引戸で中央扉は両開ですが，ドアエンジンはついていません。竣工当時の写真をみると，窓には多数の縦横の桟がついており苦難の時代の製作を感じさせます。

車内設備：定員80名，座席28名でした。床面高さは895mmと下がりましたが，ステップの段差が380mm以内に収まらないため，2段ステップになっていました。

その他機器：コントローラは泰平のB-29式に更新してます。

変更点

昭和30年10月24日認可で，車体中央部に1個あったブレーキシリンダを，各台車に1個ずつ配置する，トラックブレーキ化の改造を実施しています。

昭和31年12月22日認可でビューゲルの取り付け位置を台車直上から，車体中央へ移設しました。

昭和42年3月9日認可で，後部扉を閉鎖し，前部および中央扉に戸閉装置TD-3Hを取り付けました。

昭和47年に701,702,703,708号が廃車。

昭和49年11月25日ワンマン化認可。704,705,706,707,709,710号を改造し，昭和50年5月に竣工しています。昭和50年4月には701〜706に車号を整理しているので，ワンマン化改造と同時に施工したと思われます。

昭和54〜55年に全車廃車となりました。

車歴表