1070型

最終更新: 2005-8-29 作成: 2005-5-22

1070型

経緯

昭和42年12月に宮島線の木造車を置き換えるため，京阪神急行電鉄500型8両を購入し，ナニワ工機で改造して1070型としました。

阪神急行電鉄500型経緯

昭和13年2月22日認可で宝塚線用車両としてC#500〜511の12両を製作しました。

それ以前，昭和5年に阪急神戸線に登場した900型は，従来の3扉を広幅の2扉として中央部の補強を減らすことで，全鋼製車体としては画期的な軽量化を達成して，阪神間25分運転を支えた車両で，現在は正雀工場で保存しています。900型を2両固定編成に改良したのが昭和9年製920型で，連結部を広幅にとり隣接車両と一体感をもたせています。一方，車両規格の小さい宝塚線用として，900型の17.6m車体を15m級とし幅も300mm小型化したデザインの320型を昭和10年に製作，電気溶接を大幅に採用した昭和11年製380型と続き，やはり広幅貫通路をもつ2両固定編成の500型に発展します。

最初のC#500〜511はSKFベアリング付き鋳鋼台車を装備し窓に保護棒があり貫通路は封鎖していました。昭和15年12月4日認可のC#512〜521は台車が平軸になり保護棒はなくし貫通路は開放となりました。昭和17年7月8日認可のC#522〜525からは屋根が木製となり，さらに昭和17年6月29日に5両の増加届を行いC#500〜530の31両がそろいました。

昭和14年8月23日認可で灯火管制装置取り付け，昭和16年1月10日認可でC#500〜511の貫通路を開放し幌で接続しています。

戦後，宝塚線の車体規格を神戸線にあわせるため，昭和27年3月8日認可でステップを拡張し，車体幅を2440mmから2710mmとしています。続いて，昭和27年2月8日認可で窓の保護棒を廃止，昭和29年4月5日認可で通報スイッチと連動する非常コックを追設する小改造を行っています。

車両規格向上により小型となる500型は他の小型車と性能をあわせ運用効率を高めるため，廃車となる木造車51型の機器に振り替えることになりました。余剰となる台車主電動機などの機器は，車体幅を拡張した新造車610型に流用しました。認可は昭和30年10月4日で，この改造により自重が重くなり，高さも高くなっています。また尾灯は2灯となりました。

昭和32年11月12日認可でC#509に自動塗油装置取り付けを実施しました。

昭和33年5月9日認可で，使用線区を宝塚/箕面線に加えて，神戸/今津/伊丹線として，神戸線支線系統への転出が始まりました。

その後は昭和34年9月25日認可でM型三動弁をA型動作弁に変更し，制動システムをAMMからAMAに変更。昭和35年12月15日認可で車内灯を60Wから80Wとし，また奇数号車のパンタグラフを撤去。昭和36年7月13日認可で車内放送装置取り付けと，輸送力増強による長編成化に対応した改良を行っています。

しかし，小型車両は神宝線DC1500V昇圧に対応しないことを決めたため，昭和42年10月17日付で広島電鉄向け8両を廃車，残り23両全車を能勢電鉄への貸し出し(のちに譲渡)としました。なお能勢電鉄では昭和61年12月20日付で全廃しています。

車体関係

外観：正面は700mm幅の貫通路付き3枚窓です。窓の高さは側面にあわせてあります。幕板は製造時は右に方向幕，左に尾灯がありましたが，尾灯2灯とし方向幕は撤去，移籍時に尾灯を下に下ろしています。台枠部と貫通路下にはアンチクライマーを装備しています。連結器の高さは700mmです。連結面側は1080mmの広幅貫通路があり，両側には窓も設けています。アンチクライマーも正面と同様に設けいています。側面はd2D6D3がオリジナルですが，移籍時にdD8D3+8D5dの2両で3扉としています。元のドアの位置の上部には雨どいが残っていました。屋根は移籍車両は全て鋼板張りで，大型の通風器を10個設けています。ウィンドウシルは平板で扉以外の個所に巻かれています。ヘッダは側扉上部には回り込んで巻いていますが，前後の貫通路上部には巻いていませんでした。全長15,250mm車体幅2,710mm，自重は奇数車が31.31t偶数車が27.57tとなっています。

一般：内装を含むほとんどが鋼製で，車体は川崎車両製でした。車内は阪急伝統の木目印刷からマルーンの塗潰しに変更しましたが，後にベージュ塗装＋木目印刷シート貼り付けとなりました。

窓・戸：木製の窓枠は上部にRのあるものがオリジナルです。側面は阪急伝統の下降窓で，戸袋窓は固定でスリガラス入り，後部車掌台は引き違い窓としています。日除けは鎧戸です。扉は有効幅でも1040mmもある広幅のもので，ダイハツ製のドアエンジンを設けています。扉の開閉方向は，阪急時代は車端方向に開くのが基本なので，運転台直後の扉は車体中央方向に向かって開くよう改造していました。また中扉車掌台は戸袋と逆方向，つまり進行方向と逆方向に向かって立つようになっていました。ステップは規格向上時に設けたものをそのまま使用していたようです。

車内設備：座席定員は46名となっています。定員は92名でした。後部車掌台から窓3つ分は立ち席スペースとなっていましたが，昭和51年に車椅子乗車スペースとしました。他社でも最近は車椅子スペースを設置していますが，当時は荒川線ぐらいしかなく，大変早い取り組みでした。

機器関係

主電動機・駆動装置：48kWのGE-263又はSE-107で阪急時代には全車4個装備でしたが，広島では偶数車は2個に減らしています。駆動装置は釣掛式で歯車比は62:14となっています。新造時は82kWのGE-240A/SE-121が2個で歯車比55:20でした。

制御装置：PC-5です。新造時は83-PC-1でした。

ブレーキ装置：空気は日本エアブレーキのAMAです。制動弁はM-24-H，コンプレッサはDH-25です。新造時はAMMでした。また手用も装備しています。

集電装置：RPG-17です。新製時は全車パンタグラフを装備していましたが，前述どおり阪急時代に偶数車のパンタグラフを撤去しました。しかし千田車庫への回送など1両で動かすときに不便なため宮島側に二宮式ビューゲルを装備，後に西鉄のパンタグラフに乗せ替えています。

台車：米国JGブリル製27MCBで大正9〜13年に輸入したものです。軸ばねにコイルばねを使い弓形のイコライザが付き，枕ばねには板ばねを使った台車で，この当時のたいへん多くの車両に採用しており，乗り心地も柔らかいものでした。新造時は住友製の台車でした。

変更点

昭和58年頃にブレーキをSME(制動弁はM-18-A)とし保安ブレーキを追設，一斉扱いだった扉を各扉で個別で扱えるようにし，インタロックを設けるなど1090型に準じた取り扱いができるよう改造しています。AMAはSMEより扱いが難しく運転士の技量差を感じることもありました。入線当初は自動ブレーキの経験がないため，阪急の運転士に指導してもらったそうです。

昭和61年には列車無線も装備。受話器が貫通扉内側に取り付けられていました。

そのほか，前面貫通扉の窓を下部上昇の2段にしたり，窓枠外部をニス塗りからクリーム色の塗装としたり，木製の扉を鋼製にしたり，内装を全塗装しなおしたりと，かなり手を入れて使っていました。しかし，室内灯が白熱灯のまま(能勢電は蛍光灯に改造済み)なので力行ノッチが入ると電圧降下により白熱灯が消えかかったり，昼間でも窓が小さいので，薄暗い車というのが私自身の印象でした。

製造以来45年間一族で解体処分となった車両が出なかった優秀車でしたが，3800型投入により昭和62〜63年に解体となりました。

車歴表