1060型

最終更新: 2005-9-30 作成: 2005-1-3

1060型

経緯

昭和32年4月19日に新造ボギー車1両を購入しました。当時の私鉄で開発競争をしていた軽量高性能車です。高性能車の国鉄版である101系より一足先に登場しました。

車体関係

外観：1050型とよく似た外観ですが，主要寸法や細部はまったく異なっています。

正面は窓上部の通風孔が無くなり，屋根上に押し込み式の通風器を設けました。正面向かって右側の運転士側窓枠は固定となり，下部に通風孔を設けています。

側面の窓配置はdD6D5で乗務員扉がつきました。客室窓はバス窓で，上部の固定窓がHゴムとなっています。

塗色は他車と同様のクリームにオレンジとマルーンの帯で，屋根は水色でした。屋根の水色の塗り分けは昭和40年代に省略が始まりましたが，1061号は電制常用のためか汚れが目立たず，昭和50年代まで塗分けが残っていました。

全長は変わらず15,956mm車体幅は200mm広がり2,640mmで扉下部のステップはなくなりました。自重27.1t。

一般：全金属製で，ナニワ工機製。床もリノリウム張りで床裏は鉄板張りと防火構造になっています。

窓・戸：上記の通り正面2枚窓，側面バス窓で窓枠は塗装仕上げとなっていました。1050型より側窓が減り，幅が広がったのは標準化を意識したものかもしれません。同時期の栗原電鉄M151や，日車標準車の窓寸法に近くなっています。乗務員扉の窓と車掌台の窓には，1050型のような横桟はありません。また扉の下部の凹もなく，すっきりしたデザインでした。

車内設備：座席定員は52名，定員は120名でした。運転室は仕切り棒ではなく軽金属の壁とガラス窓で隔離していました。運転室には双針圧力計，速度計，電流計がパネル内に埋め込まれ，手用ハンドルもコンパクトな形状のものが右の壁に取り付けてありました。カノピースイッチではなく押しスイッチが仕切り壁にずらりと並ぶ運転室は大変近代的でした。

客室の座席は車端まで延び，最前列席では，運転士を後方に見ながらかぶりつきができました。車内の蛍光灯は2列となり，中央には扇風機が設けられMGのAC200V120Hz電源により動作します。

また暖房装置，放送装置も設けていました。車内の見つけも，つり革の支柱や網棚，帯材などがシンプルなデザインとなりました。

機器関係

主電動機：東洋電機製造製TDK-829-Aの45kWが4個。

駆動装置：中空軸の主電動機を車軸と平行に配置した平行カルダン方式です。歯車装置はハスバ歯車による1段減速で大歯車は車軸に固定，歯車箱は車軸に，小歯車は歯車箱にそれぞれ「テーパーローラーベアリング」で接続しています。歯車比は101:14と大きくなっています。

制御装置：主幹制御器は，起動・直列・並列・弱界磁の4ノッチとなっています。

主制御器は東洋電機製造のES-701Aで力行時は直列9段・並列7段・弱界磁3段の計19段，制動は直列8段・並列7段の計15段でした。ES-701Aはカム軸の構成が，その後の主流となる電動2軸方式となっていました。第1軸が抵抗と渡りの制御，第2軸が弱め界磁と力行制動切替と逆転器となっており，逆転器機能の組込みは他社に先駆けて行ったものです。制御電源にはMGによるDC100Vを用い，戸が閉まらないと制御電源が入らないようになっています。加速度2.8km/h/s，減速度3.6km/h/sでした。

ブレーキ装置：電気ブレーキ併用のSMED空気ブレーキ装置です。

ブレーキ弁は従来のM-18-Aの上部に電気ブレーキ用接点を設けたMD-18-Aとなっています。ハンドル位置は左より「弛め」「第一重なり」「第二重なり」「ブレーキ」「非常」の5位置があります。第一重なり位置では電気ブレーキ接点が閉となり作用します。第二重なり位置では電気ブレーキのノッチが進みます。ブレーキ位置では，電気ブレーキのノッチが進むとともに空気をブレーキシリンダに供給します。条件により電気ブレーキが減衰すると，直通ブレーキ管と同圧力の空気をシリンダに供給します。非常位置では，電気ブレーキ接点が開くとともに元空気だめと同圧力の空気をシリンダに供給するようになっていました。

集電装置：東洋電機製造製のパンタグラフで他車と同様，西広島側の台車上に設置しています。

台車：日本車両製のND-102。高拡張鋼板をプレス加工し溶接で組み立てた軽量台車です。軸箱支持は，ウイングばね式ではなく，両端に吊り棒を通した鋼材の天秤を軸箱上部に置き，吊り棒下部のばね受けと台車枠間にコイルばねを入れた構造になっています。まくらばねもコイルばねとなっています。オイルダンパは取り付けていませんでした。

変更点

料金箱制度による運転室の改造，車側の車番上に反射板取り付け(直通車との判別のため)，無線機の取り付けなどがありましたが，ほぼ原型のまま，平成元年11月20日に廃車となりました。

車歴表