1050型，1090型

最終更新: 2005-1-2 作成: 2004-11-21

1050型

経緯

昭和22年6月30日認可で京阪神急行電鉄の京阪線が供出した100型，200型木造ボギー車を計4両購入しました。当時，鉄道省から規格型車両の割当を受けた場合，新造車数から戦災車数を差し引いた分を，地方鉄道へ供出する義務がありました。

京阪電気鉄道100/200型経緯

京阪が明治43年4月15日天満橋〜五条間の開業に当たって準備した1号形30両が，この車両の起源です。天満橋から大阪市電に乗り入れ阪神梅田に直通する計画があったため，オープンデッキに救助網がついた路面電車スタイルで登場しました。

その後増備が続いていましたが大正6年1月17日に深草車庫が火災にあい15両が焼失。被害が軽微だった6両は機器と台車を新造車体に装備し復旧しました(下表の59号)。また応援に南海阪堺線の電1型が入っていました。残りの焼失車両は，大正5年11月に認可を受けた100号型急行用車両と同じ車体で復旧しました。100号型は急行列車専用で路面乗降がなくプラットホームが設備された駅のみの乗降のため，ステップレスで密閉車体となっていました。その後駅設備の改良が進んだので，大正11年から13年にかけて1号型46両を100号型に改造しました。100号型の新造車は23両でした。ボールドウィン75-25A台車装備の車両もありました。

昭和4年6月25日認可で非常用連結器を装備，昭和5年2月3日認可で救助器のブロビデンスカーフェンダーを排障器に変更，昭和7年9月27日にダブルポールを東洋電機製造製のパンタグラフに変更と，郊外電車らしい姿になりました。

大正15年10月8日認可で直接式のQ2-D制御器を，連結運転可能な複式の日立製PR100型電磁カム式制御器に改造した車両が発生しました。これを区別するため昭和4年5月5日に改番があり，直接式は100型，複式は200型に整理しました。昭和16年4月1日認可でさらに10両を改造し昭和17年5月に竣工しています。

戦況が悪化してきた昭和18〜21年に57両が長期休止車となりました。このなかから4両が広島に移籍しました。残った100/200型は大津線へ移動し，一部は260型に改造して1995年まで活躍したほか，昭和13年に機器を流用して製作した70型72号が現在も寝屋川工場の入換車として活躍しています。

車体関係

外観：正面3枚窓の3扉車です。車体の前後は絞られておらず，正面，側面とも窓枠上部内側には大きな円弧がありますが，車体側は直線になっています。前照灯は屋根上，尾灯は向かって左側の幕板にあります。幕板右側には方向幕をあったようですが使っていたのかはわかりません。側板は垂直羽目板構造で，二重屋根は先端まで延びています。全長14,637mm車体幅2,464mm自重21.5tとなっています。

一般：木造で，京阪100型改造時は7社が分担しましたが，広島に来たのは東洋車輌製と川崎造船所製でした。

窓・戸：正面は中央の窓の上部が両側より少し高い独特の顔，側面配置はD6D6Dとなっています。前述どおり窓枠内側上部にRがついていて，下降窓となっています。日除けは鎧戸です。補助ステップはホームの高さに合わせて京阪時代より低くなっています。

車内設備：座席定員は44名となっています。定員は84名でした。

機器関係

主電動機・駆動装置：英国デッカーまたは東洋電機製造の9Cで38kWが4個。駆動装置は釣掛式で歯車比は59:20となっています。

制御装置：前述どおり元100型が直接式のデッカー製Q2-D，元200型が日立のPR100型です。

ブレーキ装置：手用はブリル製，空気はGE製の2種類です。

集電装置：東洋電機製造製のパンタグラフで，シューが2本ありました。

台車：米国JGブリル製27E-1で，前述どおり京阪創業時の台車です。

1050型鋼体化

昭和28年12月〜昭和29年1月に鋼体化改造を行いました。

外観：当時流行の正面2枚窓ですが，軌道線の800型や500型と同様の通風孔がつく独特の顔立ちの2扉車です。車体の前後は絞っていません。前照灯は屋根上，尾灯は下方に2個つけています。側板はウィンドウシルがあり，ここにマルーン色の帯を巻き，上部がクリーム，下部がオレンジの新塗装となりました。全長15,956mm車体幅2,640mm自重24.0tとひとまわり大きくなりました。

一般：全金属製で，ナニワ工機にて車体を製作しました。台枠を見るとセンターピン間はほぼ等間隔にクロスビームが入り軽量化を意識した設計となっています。

窓・戸：正面向かって右の運転台側は，窓枠の下方を前に押し出し風を取り入れることができるようになっています。窓はHゴムで固定しています。この構造は，その後の直通電車にも取り入れました。左の客室側は下降窓です。

側面配置は1D8D5です。客室窓は上部固定，下部上昇式のいわゆるバス窓です。上部の固定窓がHゴムではなく，金属支持なのが500型とこの車両の特徴で，他にはない構成でした。運転台および車掌台の窓は下降窓で，客室窓枠と同じ位置に横桟を入れデザインをあわせています。なお窓枠は全て金属製ですが，塗装仕上げとなっています。日除けはカーテンとなりました。

扉はプレスドアで，下部にも凹みがついています。ドアエンジンは電磁弁で操作するタイプとなり，1030型のように操作弁から遠い扉が遅れて動くと言うことはなくなりました。扉のスイッチは車掌台にあり，両側の扉が操作できました。また運転台には扉のスイッチはありませんでした。

車内設備：座席定員は46名，定員は110名でした。運転台は片隅式となり，客室が車端まで延びています(立席のみ)。ただし手用制動のブリル製の丸型ハンドルが客室内に取り残されてしまい，「廻さないでください」と赤字で書かれていました。かぶりつき席は運転台とはパイプで仕切られただけでしたから，子供たちには人気でしたが，運転士は気になったのではないでしょうか。車内灯は蛍光灯となり，グローブ付きでで中央一列に配置しています。

車内の見つけは，帯材などがゴツく500型の木造部分をそのまま金属にしたようなデザインで，まだ設計がこなれていないことがわかります。ただ当時は国鉄でも全金属車が出ておらず最先端の技術であり，しかたがないでしょう。

機器：直接制御の車両は鋼体化時に総括間接制御に改造したようです。機器はEE社(元デッカー)のM15Aで，阪急千里山線デロの中古品のようです。

1090型

連結化改造

昭和50年代になると宮島線が直通電車主体となり，高床車は輸送力が必要な場合に使用されることが多くなったので，連結車に改造することになりました。また，改造と同時に機器更新も行いました。

外観，設備：正面は特徴であった通風孔が埋められ，運転台直上に大型の電動行先方向幕が設けられました。運転台のメータ類は3000型に準じた配置に改造しました。また運転台そのものも全室化し，側窓も引き違い式に改造しましたが，1053,1054の窓はなんと住宅用のサッシでした。運転台直後の扉は運転台で操作するようになり，また反対側の扉の一斉開放スイッチも追加しました。前照灯もシールドビーム2灯に改造し，いわゆるブタ鼻の前照灯となりました。

後部車掌台の窓は，隣の客室窓と繋いで引き違いの窓に改造。一方の中扉となった側の車掌台は，扉スイッチと放送装置を撤去しました。

連結面は，運転台を撤去し，1070型1080型と同等の広幅の貫通路が設けられました。貫通扉は設けられていません。車端窓は上部下降下部上昇のユニットサッシの2段窓。連結器は，貫通路に支障しないよう取り付け位置を下げました。このためなのか，非貫通側の連結器のナックルが下方に長く，阪急電車のような独特の形状となりました。

機器：制御装置はES-762A，主電動機はSE-180が2個，台車はボールドウィン78-25AAとなりました。制御装置，主電動機は，阪急の救援車や貨車(C#4202〜4210等)が昭和42年に昇圧改造したときに準備した機器です。

また台車も元は阪急51型が大正11年ごろ一部の車両(C#75〜86)に使用したもので，380型などをへて，貨車が昇圧改造する時にこの台車に統一しました。大正11年頃はブリル台車が入手難となったようで京阪100型もボールドウィンとのダブル認可となっていたので，問題なく変更することができました。

変更点

1053号と1054号は昭和54年に自社で連結化改造を行いましたが，改番は昭和57年となってからでした。1051号と1052号は近代化補助金の関係で一旦3000型に代替され廃車となった後，車体を大阪車両工業で連結化改造し，1090型として再登場しました。

昭和59年には全車江波車庫にて冷房化改造を行いました。冷房装置は三菱MDA方式です。手用制動器は撤去され，ハンドルの位置には冷房用低圧配電盤が設けられました。ハンドルは当時製作中の101号復元車に転用しています。また保安ブレーキを装備しました。

3900型投入により平成2〜3年に廃車となり，冷房装置，無線機を3900型に転用しました。1093-94号は平成14年8月まで荒手車庫に残っていましたが，米国シーショアの博物館に台車などの部品を寄贈するため，大変残念なことに解体されてしまいした。

車歴表